ユージンスミスと水銀から見えてくるもの

環境を護りながら金属を使う

金属アレルギーを考えていくと、金属がどこからくるのかという疑問と、土の中からという答えからさらに疑問がわいてきます。
ほうれん草を食べて鉄分を補給して貧血を改善したいとよくいいますが、その鉄分と金属の鉄は同じなの?とか。
さらにまぐろの水銀はどこからくるの?
そしてジュエリーのゴールドの採掘で使われているアマルガムの水銀。
漆塗りの朱色も辰砂(硫化水銀)。辰砂は陶芸の釉薬にも。

フォトジャーナリストユージンスミスが水俣を撮り続けていました。
水俣国際条約ができて、水俣に世界が学び環境を考えるようになりました。
水銀が生物濃縮されると聞いても今の人にはピンと来ないかもしれませんが、当時の水俣病といえば4大公害病と習ったのは記憶が浸み付いています。
水銀の濃縮と身近に実感したのは、厚生省からの「妊婦はマグロ食べないで」のおふれです。ツナ缶もだめだよ。というおふれ。
日本人はマグロ大好きで、日本の食文化です、それを危険だから摂取しない方がいいですとふれまわるのですからよっぽどのことなのです。では妊婦ではない大人は水銀いいのか?という疑問も湧きました。言い訳は、胎児は水銀を排出できないから。成人は排泄されるからというりくつです。ちなみにアメリカは胎児と小児も食べないでということになっています。水俣湾の魚のメチル水銀は排泄されなかったのに。
正確には日本でも全く食べないでとは言っていません。週に2回までにしてねといった量を示しています。
ちなみに魚の中で一番水銀を貯め込み、なおかつヒトの口に入る可能性の高さナンバーワンのお魚がマグロです。ほかにマスとかもありますけれど。
ユージンスミスの写真から感じること、ほんとうに水銀あるのだなと思います。
今や水銀は蛍光灯にも体温計にも使われない方向になっています。生産をストップ。でないと、ゴミ焼却場で水銀体温計が燃やされて空気中に蒸発した水銀が拡散するので水銀の蒸発も計測されるようになっています。
水銀は金を抽出するアマルガムに使われ奈良の東大寺の大仏にも使われましたので、奈良時代の仏像金箔職人はたくさん水銀中毒患者が出ていました。昔は知識がなくひどかった。
水銀はゴールドの鉱山でも金の抽出のために大量に使われ、河川に流れ海に出てマグロに凝縮され遠洋漁業で日本にも関係している濃縮の構図があります。

有機水銀と無機水銀は違う

アマルガムは歯科治療にも使われ、子どもの頃は私もアマルガムを詰められた記憶があります。歯医者さんの治療台の上にはアルコールランプのような炎が燃えていたんですが、それで加熱してやわらかくなったアマルガムを削った歯の中に詰めていたのです。今では紫外線硬化するレジンがありますので使われなくなりました。水俣病のメチル水銀とアマルガムはまた違いますが。
赤チンも傷口に塗られました。皮膚の表層に重金属がついたからといって、それが皮下まで浸透するとは思わないのですが、保健室や自宅で塗ったのは皮膚が損傷した傷口の記憶。赤チンは水銀が入っていたというのは誤解で、製造過程で水銀を使い廃液が下水に流れることで環境汚染につながるとして今は使われなくなりました。傷に対してひとりひとり脱脂綿とピンセットを使うことなく、マジックインキのようにスポンジに含ませた赤チンを学校全員で使い回していたのを考えるとと、使い回しされた注射針が想起されます。
赤チン~水銀化合物の歴史より抜粋===============
赤チン、戦後になっても比較的広く使用されていました。しかしその後、アセトアルデヒドの合成時に発生する(と考えられる)有機水銀化合物により、熊本県水俣湾でのチッソ社(現JNC)による水俣病、新潟県阿賀野川流域での昭和電工による第二水俣病が起きたことは皆様ご存知だと思います。その恐ろしい毒性と高い蓄積性で多数の被害者を出したことを受け日本国内では1973年、1974年にはそれぞれDHMを含む医薬品や農薬での水銀化合物のほとんどが国内製造・使用禁止となりました。
================以上抜粋おわり

一番ショックだったのは、ユージンスミスが水俣の写真を撮り続けていた時に、チッソ社内五井で水俣病患者と共に襲われて大腿骨と頸部とを折られNYに帰国を余儀なくなれ右目の視力を失っていたと知ったことです。
ユージンスミスといえば、子どもが手をつないで森の出口のトンネルから抜け出す後ろ姿のあの写真で有名ですが、そんな最後を迎えていたとはショックでした。チッソという会社はいまでも在ります。
ユージンが写真によって言いたかったこと、産業発展の一方で、工場から出る廃棄物による害で暮らしが一変してしまう弱者がいるということ。水俣の場合はチッソという会社を天守閣にした城下町のひとたちが水銀の魚介類を食べ、各家庭に患者を抱えることになった事件で今も続いています。
企業の責任CSRとサスティナビリティ

環境を考えることは自然に回帰すればいいということではありません。もうモノを作らず舗装もなくし、電気のない土と自然のいなか暮らしをすれば良いというものではありません。環境省 持続可能な環境と経済
有機水銀化合物の毒性はいつ頃から明らかになったのか?