チタンと金属アレルギー
金属アレルギーに対する知識については常に更新され、研究され発表がなされています。それについて思うことがありますので書きます。
基本的に、あらゆる体外物質がアレルギー原因となる可能性があります。自然のお花も草も。
花粉やブタクサが原因の空気伝播性アレルギーのように、無害なのにからだが反応するわけは、それだけ人間に近いからだとか、接した経緯があったからだとか、どんどん身体に新しいものが入ってくるからアレルギーとなって現れるとかそういったおまじないのようなことでアレルギーが出てくるのではありません。
以前は、チタンと金属アレルギーの関係を、チタンがまだ感作例が報告されていないのは、人類にとって歴史がなく、日常品として出回っていない、接触してきた歴史が無いからと、まるで体質によっては同じ金属なのだからチタンもジルコニウムも今後百年もして、チタンのマグカップで飲み物を飲み、チタン製フライパンで皆が調理し、チタンチタンの生活になったら、チタンアレルギーの体質も出てくるかも知れないといった間違った知識でいました。
しかしこれはとても古く、あやふやな知識。
チタンの金属アレルギーが起こらない理由は、皮膚界面でチタンが無反応だから
金属が固体の金属のかたちのまま皮膚の中に入り込むことはできません。金属イオンになって金属から離れて皮膚に移動する必要があります。
ニッケルやクロムや銅などの金属は汗に含まれる塩素、乳酸などによりイオン化してしまうので、からだに入り込んでから、合う合わないといった体質との相性によってアレルギー作用が起こってしまいます。
屈強な防御壁≒酸化被膜を作るのがチタンの特徴
しかしチタンはまず皮膚界面でイオン化できない性質の金属なので、からだに入り込むことができません。金属イオンとなって皮膚に移動する前に、酸素分子が吸着してきて防御壁を築いてしまうからです。このような防御壁を酸素分子によって築く金属はほかにもあります。CDの表面に蒸着しているアルミニウムもチタンのようにレインボーになります。その防御壁の厚みの違いでシャボン玉のような光の拡散を生み出します。チタンのような被膜は他の金属にもありますが、チタンの場合はその壁の緻密さ、強靭さが違います。汗によって崩されるものではありません。
従いましてどんな体質でもどれだけ人体に関わってもこの先もチタンが皮膚によってイオン化できる環境がないので作用も起こらない、金属アレルギーが起きないのです。
一般の接触性皮膚炎にはいろいろな原因がありますが、T細胞が深く関わっているという研究結果がでています。
チタンをイオン化させることは自然界では起こりませんが、無理やり電離させるような外からエネルギーを与えれば塩化物によってイオン化させることはできますが、実験室で普通は手に入らない劇薬を使って装置を使う話と、皮膚の界面で起り得るイオン化の話をごちゃまぜにしていると勘違いがおこります。
チタンというのは酸素に親和性が強いことにより、酸素分子とくっついて、チタンが劣化されない防止膜を瞬間的に張り巡らしてしまう特性を持っています。この防止膜(酸化被膜)を汗の成分が突破できることはありません。チタンの酸化被膜を突破できるような強力な汗をかく人の手は、触る物すべてを溶かしていってしまうでしょう。電車の手すりも溶け、水道の蛇口をもとかしてしまうような手汗をかく人は存在しません。人の汗はだれしも同じpH値範囲内に保たれています。
皮膚科による接触性皮膚炎の解説
金属アレルギーをひきおこす病原性T細胞を発見